本大会前は仮想敵国が相手
いよいよロシアワールドカップが目前に迫ってきました。
大事な本番前、日本代表はベルギーに遠征して、強化試合として2試合を予定しています。
先日はその試合のための招集メンバー26人が発表されました。

今回の欧州遠征試合を日本サッカー協会が発表したのは今年に入っての2月9日でした。
昨年の暮れの12月1日に行われた本大会のグループ分け抽選からほぼ2カ月後です。
通常、本大会前の試合は、グループ予選で戦う相手とよく似た国を選びます。
いわゆる「仮想敵国」という捉え方ですね。2ヶ月間で探してきた国がこの欧州遠征の相手となります。
コロンビア、セネガル、ポーランドといった違うタイプとそれぞれ似たような対戦相手と3つ試合をしたかったのでしょうが、今回はセネガルとポーランドを想定した試合を組んだようです。
セネガルを想定して選ばれたのが「マリ」。ポーランドを想定して選ばれたのが「ウクライナ」です。
では、それぞれはどんなチームなのでしょうか?仮想セネガル、仮想ポーランドのチームの特長を見ていきましょう。
仮想セネガル=マリ

マリはアフリカサッカー連盟に所属しています。現在の最新FIFAランキングは67位。
ワールドカップ本大会の出場経験は未だありません。
今回のロシアワールドカップ予選は、アフリカ最終予選まで進みましたが、モロッコ、コートジボワール、ガボンと同組になり、6戦4分2敗という結果で本大会出場の夢は叶いませんでした。
ホームの3試合はすべて「0-0」で引き分け、望みをアウェーに託しましたが、コートジボワールに「1-3」で負け、モロッコに「0-6」で敗れています。
スタイルは典型的なアフリカンサッカーで、スピードとフィジカルの強さ、つまり「個の強さ」で局面を突破するサッカーです。
予選結果だけを見ると、6試合で1得点だけしかゴールを挙げていないので「得点力は低い」と思ってしまいますが、個人の能力は時にズバ抜けているので油断はまったくできません。
マリでは有名な選手が2人います。1人はバルセロナでも活躍したセイドゥ・ケイタ選手。

中盤での活動量の多さで目を引き、ボールテクニックにも優れたマリの英雄です。
今回の遠征メンバーには選ばれていないので、セイドゥ・ケイタ選手と日本人選手とのマッチアップが見られないのは残念ですね。

もう1人がカヌーテ。フレデリック・カヌーテ選手。もう代表から退いて長いのですが、セビージャの黄金期に存在感を発揮して、セイドゥ・ケイタ選手とフレデリック・カヌーテ選手が揃ったマリ代表は、アフリカでは他の国から脅威として一目置かれていました。
マリを率いる監督は、アラン・ジレス監督。
あの1982年ワールドカップスペイン大会で、4人の黄金の中盤で一世を風靡したブラジル代表と死闘を演じたフランス代表のシャンパンサッカーの体現者です。
彼の知的でエレガントなサッカースタイルはまだ記憶に強く残っています。
フランスとアフリカの繋がりの深さもあって、アラン・ジレスは2013年から2015年まで日本代表の対戦相手であるセネガルでも監督を務めた経験があります。
私たちの監督も同じフランス語を操り、国籍はフランスです。
アラン・ジレス監督からセネガルの貴重な情報や特徴を伝えてもらえたらいいですね。
仮想ポーランド=ウクライナ

今のポーランドはFIFAランキングも5位と、非常に強い国となっています。
前回大会の2014年にはFIFAランキングが40位ぐらいでしたから、この数年間で劇的に順位を上げてきています。
そんなポーランドの代わりを務められる国はそうそうありませんが、それでも似たタイプ、似たスタイルの国は探せます。
今回は同じ東欧のウクライナがポーランドの役を務めます。
ウクライナは典型的な東欧のサッカースタイルを持っているチームです。
テクニックに優れ、パスをしっかり繋ぐサッカーです。
ただ、ブラジルのようにテクニックに走ることはなくて、時と場面によってはスピードを上げて裏を狙ったり、身体能力の高さを使ってシンプルなクロスを上げて来たりします。
ウクライナのFIFAランキングは現在37位です。
実は日本よりも上位なのですね。それでもウクライナがワールドカップに出場したのは2006年ドイツ大会の1回のみ。あとは全てヨーロッパ予選で敗退しています。
その2006年ドイツ大会ではグループリーグでサウジアラビアとチュニジアという相手にも恵まれて(?)見事決勝トーナメントに進出してベスト8まで行きました。
やはりヨーロッパサッカーのレベルは高いです。

現在のメンバーもヨーロッパの主要リーグで活躍しています。香川真司選手と同僚のアンドリー・ヤルモレンコ選手はドルトムントの新しい中心選手です。
17-18チャンピオンズリーグで最後までローマを苦しめたシャフタール・ドネツクのレギュラークラスの選手が揃ってウクライナ代表に名を連ねています。
監督は、ウクライナの英雄、アンドリー・シェフチェンコ。ACミランの黄金時代のストライカーです。

ただ、監督になってからは規律を重んじ、パスワークに加えた組織力で代表の強化に努めました。
ロシアワールドカップではヨーロッパ予選のプレーオフにまで残りましたが、ライバルであるクロアチアに敗れて本大会出場を逃しました。
しかしながら、その手腕は「名選手名監督にならず」という定説を覆すもので、今回の試合も決して親善試合だからと言って「手加減をする」ような監督ではないと思います。
日本代表としては「望むところ」という感じですね。
欧州遠征2試合の見どころ
ハリルホジッチ監督のサッカーのキーワードに「デュエル」というものがあります。
これは日本語では「球際の強さ」などと訳されていますが、もっとその概念は広くて、
・1対1のボールの奪い合い
・相手のボールを略奪する力
・マイボールを簡単に失わない強さ
など、個人対個人の局面全てを指すものです。
デュエルの強さがどこまで上がっているのか?を、試すときに、今回の身体能力に優れたアフリカンサッカーのマリ、ヨーロッパサッカーで揉まれ、シェフチェンコ監督の下で規律と厳しさを加えつるあるウクライナは、格好の試金石となるでしょう。